レティシアでの戦闘で失われた残り火隊の兵士たちの弔いに、オルコットは立ち会った。

弔いの場は、入植地の外縁に設けられた小さな広場だった。発電施設から立ち上っていた煙は、すでに鎮まっていたが、焦げた金属の匂いが、まだ風に混じって漂っていた。広場の中央には、簡素な木製の台が七つ並べられ、それぞれの上に、戦死者の認識票と、彼らが身につけていた装備の一部が置かれていた。夕刻の弱い光が、その認識票の金属面に鈍く反射していた。

残り火隊の生き残った隊員たちが、装備を外し、無言のまま整列していた。オルコットは、その列の端に立ち、彼らの疲労しきった横顔を見つめていた。誰もが、まだ戦闘の緊張が抜けきらない硬い表情のまま、目の前の七つの台を見つめていた。入植地の住民たちも、遠巻きにその様子を見守っていた。彼らを守るために命を落とした者たちへの、せめてもの弔意だった。

マグダが、戦死者一人ひとりの名を読み上げていく。彼女の声は、いつもの荒っぽさが嘘のように鳴りを潜め、一言一言を噛みしめるような重みを帯びていた。

「――トマ・ライエル、34歳。妻と娘を残した」

その名が読み上げられた瞬間、列の中の一人が、小さく肩を震わせた。オルコットは、その隊員がトマと親しかった仲間なのだろうと察した。

「カロン・ベイス、41歳。この仕事に来る前は、農園の警備員だった」

「サナ・ホルム、26歳。うちの部隊じゃ、一番の若手だった」

マグダの声が、わずかに掠れた。サナという名の若い隊員のことを、オルコットもまた、これまでの作戦の中で何度か言葉を交わしたことがあった。快活で、いつも率先して危険な任務に志願する若者だった。その若さが、こんな形で失われることになるとは、想像もしていなかった。

さらに続けて、四名の名と、それぞれの短い記録が読み上げられた。かつて漁師だった者、幼い頃に灰域の外から移り住んできた者、寡黙で目立たなかったが仲間からの信頼が厚かった者、入隊してまだ一年に満たなかった新人――それぞれの人生の断片が、簡潔な言葉とともに、広場の空気に刻み込まれていった。

マグダは、一人の名を読み上げるごとに、その台の前で一度立ち止まり、認識票にそっと手を触れてから、次の名へと移った。その所作は、何百回と繰り返してきたもののように、静かで淀みがなかった。だが、七つ目の名を読み終えた後、彼女はしばらくの間、その場から動けずにいた。オルコットは、彼女の背中がわずかに震えているのを見た。傭兵という仕事に何年携わってきたとしても、慣れることのない重さが、そこにはあるのだと、彼は改めて思い知らされた。

七名の名前が、静かに読み上げられた。オルコットは、その一人ひとりの記録を、自らの手記にも書き留めた。数字だけの犠牲者にはしない。それが、彼が三年前から抱き続けてきた誓いだった。あの実弾試験事故で命を落とした民間人たちの名が、改竄された記録の中で、ただの「不特定多数」として処理されていたことへの、彼なりの抵抗だった。

弔いの間、オルコットは広場に居並ぶ隊員たちの顔を、一人一人見渡した。誰もが、目の前の喪失を受け止めきれずにいるような、硬い表情をしていた。それでも、誰一人として声を荒げる者はなく、ただ静かに、仲間の名前が読み上げられるのを聞いていた。

「――艦長さん」

弔いの後、マグダが声をかけてきた。彼女は装備を外し、疲れきった様子で近くの瓦礫に腰を下ろしていた。

「うちの連中も、もう気づいてる。これは、単なる金で請け負う仕事じゃなくなってきてるってね」

「すまない」

「謝るなよ。うちらは、それでもあんたについていくって決めたんだ。ただ――」

マグダは、灰域の暗闇を見つめた。その視線の先には、まだ完全には消えていない発電施設の残り火が、微かな赤い光を放っていた。

「これは、もう戦争の始まりなんじゃないか、って思ってる連中もいる」

オルコットは何も言えなかった。否定できる材料が、彼の手元にはなかった。マグダの言葉は、彼自身の胸の内にある不安と、そのまま重なるものだった。

「艦長さんは、こういう時、何を思うんだ」

マグダが、ふと尋ねた。オルコットは、しばらく考えてから答えた。

「――同じ問いを、俺はもう何年も自分に投げかけている。答えは、いまだに出ていない。ただ、名前を刻むことだけは、絶対にやめないと決めている」

「それだけか」

「それだけだ。今の俺にできることは、それしかない」

マグダは、その答えに小さく笑った。皮肉でも嘲りでもない、疲れた者同士が交わす、ささやかな共感の笑みだった。

「――らしいな、あんたは」

彼女は立ち上がり、装備を担ぎ直した。

「じゃあ、俺は奥さんに会いに行く支度をしてくる。あんたも、心の準備をしておけよ」

「わかった」

オルコットは、その後ろ姿を見送りながら、これから訪れる悲しみの重さを、静かに受け止める覚悟を固めていた。

「――トマには、娘がいたんだったな」

オルコットが尋ねると、マグダは頷いた。

「まだ五つだ。奥さんには、俺が直接会って伝えるつもりだ。あんたの手を借りるまでもない」

「いや、俺も同席させてくれ。俺が呼んだ戦いで、彼は死んだ」

マグダは、しばらくオルコットの顔を見つめた後、小さく息を吐いた。

「――わかった。ただし、余計な謝罪はするなよ。奥さんが欲しいのは、謝罪じゃなく、トマがどう戦ったかという話だ」

オルコットは、静かに頷いた。

「わかっている。彼がどれだけ仲間を守ろうとしたか、俺の見た限りのことを、正直に伝える」

「それでいい」

マグダは、瓦礫から立ち上がりながら、ぽつりと付け加えた。

「――カロンの方は、身寄りがない。だから、うちの隊で弔いの費用は持つ。サナは、故郷に兄貴がいるらしい。手紙は、もう送った」

そうした事務的な報告の一つ一つにも、マグダなりの弔いの形が滲んでいた。オルコットは、その姿勢に、深い敬意を覚えずにはいられなかった。

弔いが終わった後も、オルコットはしばらくの間、七つの台の前を離れられずにいた。認識票に反射する夕光が、少しずつ弱まっていくのを、彼はただ黙って見つめていた。三年前、自律核実弾試験の事故現場で見た光景が、ふと脳裏に蘇った。あの時は、犠牲者の名前すら公にされることはなかった。だからこそ、自分はここで、こうして名前を読み上げ、記録し続けることに、意味を見出そうとしているのかもしれない。それが、償いにすらならない、ささやかな抵抗だとしても。

日が完全に落ち、広場の照明が焚かれる頃になっても、オルコットはまだその場に留まっていた。

その夜、セシルがオルコットの元を訪れた。彼女は、弔いの場には同席していなかったが、事後の報告を通じて、詳細をすでに把握しているようだった。

「――お悔やみ、申し上げます」

「ありがとう」

「私が連邦にいた頃には、想像もできませんでした。こちら側でも、こんなにも多くの人が、名もなく死んでいく現実があるなんて」

セシルの声には、深い動揺が滲んでいた。彼女にとって、戦闘の犠牲者というものは、これまで報告書の中の統計数値としてしか触れてこなかったものだったのかもしれない。

「名もなく死なせないために、俺たちは名前を刻む」

オルコットは、静かにそう答えた。

セシルは、静かに頷いた。

「――グレイ、聞いてもいいですか。あなたは、この状況を止められると、まだ信じていますか」

オルコットは長い沈黙の後、正直に答えた。灰域の暗闇の向こうに、まだ小さく燻る発電施設の残り火が見えた。

「わからない。ただ、鍵を託した意味を、無駄にはしたくない。たとえ両国が戦争に向かおうとも、少なくとも鍵だけは、どちらの手にも渡らずに済んでいる」

「それが、希望ですか」

「――小さな希望だ。だが、俺が今、縋れるものはそれしかない」

セシルは、オルコットの手をそっと取った。彼女の手は、いつもより冷たかった。

「今日、弔われた七人の名前を、私にも教えてもらえますか。忘れないように、私の中にも刻んでおきたいのです」

オルコットは、静かに七つの名前を一つずつ口にした。トマ・ライエル。カロン・ベイス。サナ・ホルム。そして残る四人の名も、彼は一つも間違えることなく、丁寧に読み上げた。セシルは、その一つ一つを、まるで祈りの言葉のように、静かに繰り返した。

「――ありがとうございます」

セシルは、静かに言った。

「私には、そう簡単に祈る資格がないのかもしれません。ですが、それでも、この名前だけは覚えておきたいのです」

「資格なんてものは、誰にも要らない。ただ覚えていること、それだけでいい」

オルコットは、彼女の手を握り返した。二人は、しばらくの間、言葉を交わすこともなく、ただ互いの体温を確かめ合うように寄り添っていた。

灰域の暗闇の中、二人はしばらく無言で寄り添っていた。遠くで、まだ完全には消えていない発電施設の残り火が、微かな赤い光を放っているのが見えた。オルコットは、この静けさが、いつまで保たれるのか、もはや誰にもわからないことを、痛いほど感じていた。七つの名前は、彼の手記に刻まれた。だが、この均衡が崩れた時、次にどれだけの名前を刻むことになるのか、その数を、彼はまだ想像したくなかった。

(第49話へ続く)